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牛飼い農家の里山チーズ工房IKAGAWA
From Cow to Cheese, Traditional Natural Cheese, Ikagawa Farm

前編
自然とともに生きる、牛飼い農家のこだわりチーズ。

Craftsmanship of Cowherd & Natural Cheese Maker in Country Place

後編 自然を活かし、生かされる。五十川家の里山ライフスタイル

安全な牧草育てから始まるチーズづくり


「新鮮な青草はこの子たちの大好物なんですよ」
刈り取ったばかりの青草を土産に早朝の乳搾りにやってきた充博さんの姿を見つけると、2頭のジャ
ジー牛、ココとナナは、誰に言われるでもなくいそいそと搾乳小屋に入ってきてスタンバイ、朝の日
課である乳絞りが始まった。

農薬を使っていない牧草や自生の野草など、自然にあるものを食べて育つ牛たちのフンはみごとな草色。
しかも、ちっとも臭わない。

「牛たちが健康な証拠。健全な牛のミルクでつくらないと、安全でおいしいチーズにはなりませんから」

Native Pasture Planting for Good Cow, Good Milk.

“They love fresh & natural grass.” Mr. Mitsuhiro Ikagawa, the owner of Ikagawa Farm
told us with smile on the green beautiful pasture.
Two cows, Coco and Nana came into the milking house and the morning milking has started.

They are pasture raised. The pasture is native, pesticide-free, organic.
The cow dung is very green, does not smell at all.

It is the proof that the cows are very healthy.
Only healthy good cow can produce healthy & safe, good quality Milk and Cheese.

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充博さんと戯れるノノ、広々とした牧草地でゆったりと育まれる贅沢なミルク。

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好物の青草を食べているあい間に乳をしぼる。

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緑色の糞は不思議なくらい臭わない。たっぷり食べた青草が姿をかえて、お出まし。

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今朝のミルクの具合はどうか?自分の舌で甘味の度合い、また塩気が無いかなど、お乳の状態を確認をする。

千葉県いすみの里山に5軒のチーズ工房が点在するチーズ村と呼ばれる一角がある。

その中でも、チーズ工房IKAGAWAは、4頭のジャージー牛を飼育しながら、エサとなる牧草作りか
チーズの完成まで一貫した手作りにこだわる、家族4人が経営する小さな工房だ。

自給自足、自然の循環に寄り添う里山暮らしを満喫しながら作るチーズは、本場スイスで学んだ伝統チ
ズ、ムチュリほかモッァレラやクリームチーズなど5種類ほど。
いずれも、ジャージー牛乳の味わいを活かしたこだわりのチーズとして根強いファンがいる。

Isumi, Chiba, Japan. There are five cheese farms in country side, Isumi.

In the cheese village, there is the Cheese Factory run by Mr. Ikagawawa.
His Family raise four cows as pasture raised, of course he controls the pasture, too.
He takes importance of traditional cheese making, which he learned in Switzerland.
He makes about five kinds of cheese, such as traditional Switzerland cheese, Cream Cheese,
Mozzarella and Mutschli .

The cheese is made by organic jersey milk and those are loved by gourmet people.

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チーズづくりの仕上げはラベル貼り。ひとつひとつ丁寧に。

ジャージーミルクで作るスイスで学んだ伝統の味


朝夕2回の絞り立てミルクは、離れの小さな工房で、すぐにチーズに加工される。

「牛乳にも旬があるのを知っていますか?うちの牛たちは、夏はフレッシュな青草、冬場は干し草や
食べさせるから、季節によって乳量はもとより、乳脂肪分の量も多少違ってきます。それも、ホル
モンクスリを使わず育てた自然なミルクで作る手作りチーズだからこその季節感があって良いので
はと思っいます」

春の牛乳がベストと語る明子さんは、工房を一緒に立ち上げたご主人を亡くされてからチー作りを
一手にひき受けチーズ職人として工房に立ち続けている。

Traditional Style, make cheese from Jersey Milk

Ikagawa family pump milk twice a day.
The fresh milk is brought to factory to make cheese immediately.
There is best season of milk. In summer time they eat fresh grass, in winter time
they eat dried grass and straw. The amount of milk is different according to season,
and even amount of milk fat is different, too.
We don’t feed any hormones or drag. We take it as natural thing, and we take importance of it, too.

Akiko, Wife of Mr. Ikagawa, who established Ikagawa Farm says
“The best season of milk for cheese is Spring."
She still work at the factory, making cheese even after her husband passed away.

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たっぷりの青草を食べるココ。刈りたてのフレッシュな香りに顔を埋めそうになりながら。

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チーズの出来を左右する練り加減。かなりの力仕事も淡々と。

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敬記さんが残した手作りの道具が、今も、明子さんのチーズづくりを支えている。

脂肪分が多く濃厚なジャージーミルクに乳酸菌を加え、指先温度計で80度を確認すると、木べらでし
っかり練りあげ作る。糸引きのよいモッツアレラチーズは、ミルクの甘さがほんのり香る、フレッシュ
タイプのチーズ。一方、工房の一番人気、ムチュリは、乳酸菌を加えて約2〜3ヶ月の間、岩盤をくり
いて作ったという熟成庫で発酵させるセミハードタイプのチーズ。

「最初の10日間くらいは毎日、その後は少しずつ間隔をあけてチーズの表面を塩水で磨いて熟成させ
ます」というスイス・アルプスの伝統的な製法で手間ヒマかけて作られる。
表面はやや固めで中はもっちり、熟成チーズにしてはクセのないマイルドな味わいながら、単純ではな
い深みがあって、つい手が伸びしてしまうおいしさ。

ムチュリを作っている工房は国内ではほどんどなく、チーズ工房IKAGAWAならではの看板チーズだ。

Akiko adds lactic acid to Jersey Milk, and warms it up to 80 degrees, then
kneads it with wooden spatula well. The mozzarella is type of fresh cheese, and
contains of sweetness of milk.
The best popular product, Mutschli is type of semi-hard cheese, which needs to be
fermented in the stone storage for two to three months.

They polish the cheese with salt water everyday for first ten days.
Gradually the frequency of polishing gets less and less.
It is one of traditional method to make Mutschli. It takes lots of time and hand work, but
it is also one of important essence to make it good taste.

The surface of Mutschli is little hard, and inside is very soft and tender.
The taste is so mild and rich flavor. This kind of cheese is very rare to be found in Japan.
There are many specific, traditional points to make high quality Mutschli.

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手際よく丸められたモッツァレラチーズ。できたてのほやほや。

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岩盤をくり抜いてつくった熟成庫。扉の向こうで静かに菌たちによる発酵作業が進められている。

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雑菌を持ち込まないように、蔵の中に入れるのは明子さんだけ。

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大好きだった赤ワインも今は控えて健康第一、毎日工房に立ち続ける明子さん。

家族ひとりひとりが大切な役割を担う


現在、五十川家のメンバーは、夫婦で工房を立ち上げた明子さんと、末娘のゆかさん、ゆかさんとの
運命的な出合いを経て家族になった充博さん。そして二人の間に誕生した羽奈ちゃんの4人家族。プ
ラス、今は4頭のジャージー牛。

充博さんにバトンを渡すように、天国に旅立った創業者の敬記さん亡き後、工房のあり方を模索しな
らも現在は、家族で役割を分担することで、うまく切り盛りしている。

明子さんはチーズの加工を博さんは放牧をはじめ原料となるミルク作りや田畑仕事を、ゆかさん
は子育てをしながらも販売や広報を、そして、羽奈ちゃんは、愛らしい笑顔で家族の心をつなぐかす
がいとして、ひとりひとりがチーズづくりにかかせない大役を担っている。

The importance of family team work

Ikagawa family - Akiko, who established “ Ikagawa Farm” with her husband,
daughter Yuka, Yuka’s husband Mitsuhiro, and their sweet daughter Hana,
and four Jersey Cows.
They have their own role and each person is essential to make cheese,
such as sales, making cheese, farming, cheering up with smile.

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五十川家のがんばりをそっと見守る。敬記さんの想いや道具はそのまま家族とともにある。

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空き地の草刈りも大切な日課。ここの青草は牛たちの御馳走になる。

「お互いの仕事は信頼して任せる」という充博さんに、明子さんも「チーズ作りはやりがい、生き
になっている」。とはいえ、チーズの味や固さなど、大切なことは家族会議で話し合う。嗜好性
高いチーズだけに判断は難しく、それぞれの意見がぶつかり合う事も。

家族経営だからこその率直なやりとりも、羽奈ちゃんを前に皆が和らぐ。羽奈ちゃんの未来を想えば
工房のあるべき姿も見えてくる。

Mitsuhiro says “We trust each other. So I let them do by their own way.
Akiko says “Making Cheese is breath of my life.
They discuss about making cheese, taste, level of hard & soft of cheese
in family meeting. We discuss very honestly. Hana, the little girl makes
the atmosphere cozy and cheer them up. Thinking about her future,
they can see some vision they should aim to.

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里山でのびのび育つ、五十川家の癒し系アイドル羽奈ちゃん。

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ふつうなら、危険のないようカットする角は切らずにそのままに。人(牛?)口密度の広いゆったり放牧ならでは。

出合いに恵まれ、里山に生きる。

2頭のジャージー牛をゆずり受けた明子さん夫婦は、かってのスイス暮らしで刺激を受けた牛飼い
家としての暮らしを日本でスタートするべく、土地探しに奔走した。
結果、この場所を選んだ理由は、「北山で南面」の地理的条件に加えて「となりのおじちゃんおばち
ゃんがよい人だったから」。

「よそ者が来て、新しい事を始めるには、一人でイキんでもだめ。地域の皆を巻き込んで盛り上げて
いかないと」。生前、敬記さんがよく口にしていたこの言葉を受け継いだ充博さんは、隣近所の稲刈
をはじめ仕事などを手伝いながら、いろんな事を学ばせてもらっているという。代わりに、少し
も地域の役にたてることはないかと、いつも考えている。

Life in Country Side

In old time, Akiko and her husband got two jersey cow and
they looked for the land to make cheese in a place which is like Switzerland,
because they were influenced by the life style there.

Finally they were settled down on the place in Chiba, Izumino.
Because neighbor people were so nice, and the land scape was good for making cheese.

“We can’t do anything without other’s help. and we should help others, too, especially
when we start something new.” Aikido’s husband used to tell this words to Mitsuhiro.
Mitsuhiro says “When I help other people, I always learn something.” He takes importance
of helping others.

There are some works which young power is required. Also, there are many things
which are told from people to people, the knowledge of life in country side.

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坂を上ると森の中にひっそり佇むIKAGAWAチーズ工房は、古民家を改築した手作りの工房。

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作り立てのチーズを販売。遠方から買い求めにくるお客さんも多い。

地域の集会場の目前に広がる不耕作地に生い茂る青草も、手入れを兼ねて刈らせてもらい、牛のエ
にするなど、持ちつ持たれつの関係も生まれた。障子の張り替えを頼まれたこともある。
「若いもんには若いもんにしかできない役割もあると思う。逆に、暮らしの知恵や経験を僕らは教え
もらっています」。

よそ者から次第に頼られる存在へ、地域あっての里山暮らしから学ぶことは多い。

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長雨が続き、刈り残した稲を、ゆかさんも手伝い一気に刈り取る。頼もしい助っ人。

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通称「江戸ばあちゃん」ことご近所のばあちゃん。また、五十川家の田んぼを気にして様子を見にきてくれた。

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里山ぐらしに必要なもの。充博さんならではの真面目な人柄と優しい笑顔。