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きのこ百姓  増島農園
Masujima Farm

前編 一夜で溶けゆく潔くもはかないキノコ、コプリーヌ。
Coprinus, Fragile and the Beauty Mushroom

後編 「百姓品質」を受け継ぐ、キノコ職人のDNA。

[ かわいらしさに魅かれて ] 増島家の一員に迎え入れる。


コプリーヌ。和名を「ササクレヒトヨタケ」という。
成長し、傘が開くと自ら分解酵素を発し、一夜で溶けて消滅してしまう。
静岡は伊豆の国市でキノコ栽培を手がける増島農園の若き経営者、増島健太郎さんは、妻、暁子さん
を伴い香港を訪れた際、現地の高級スーパーでこのコプリーヌと出会った。

フランスのガラス工芸家、ガレのランプのモチーフにもなっている
「かたちのかわいらしさに一目ぼれしました。帰国してから種菌を求めて探しまわりましたよ。」

傘が開く前に収穫されるコプリーヌは、ヨーロッパではインキーキャップと呼ばれ、高級食材として
知られている。が、当時、日本で種菌を手に入れるのは至難の業だった。
やっと手に入れ栽培を始めるが手間のかかるわりに極めて収穫量が少なく、流通に乗せるのも難しい。
「おがくずの培地を詰めたボトルに種菌を注入し、菌糸が広がり始めたらさらに土を被せなければ芽がません。」
いろんな土を試しては、増島家のコプリーヌにとって最適な掛け布団を見つけだした。

Coprinus, Beautiful Mushroom

Izunokunishi, Shizuoka, Japan.
There is a mushroom farmer who grows special mushroom, called “Coprinus”,
which is known as “Ink Cap”, one of gourmet mushroom in Europe.
This mushroom is also famous as a motif for table lamps by Emile Galle, one of Art Nouveau artists.

“It was very difficult for us to find spawn in Japan. And after we found it, lots of hurdles ware
waiting for us.” said the owner, Mr. Masujima.
Less of half amount of mushrooms could be on market but it needs a lot of time to take care of
coprinus in good quality.
They learned its characteristic through trial and error, and finally found good way to grow it.

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増島農園オーナー、増島健太郎さん。コプリーヌのかわいらしさに一目惚れ。

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静かに成長する、菌糸たち。目で、鼻で、五感で成長やタイミングをかぎわける。

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菌糸が広がり準備ができたボトルを、菌床のトップをかき出してから、芽出室に運ぶ。ひとつずつの工程を、丁寧に、迅速に。

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菌床をかき出す機械。丁寧に長年使われた、独特の美しさがある。

[ 手のかかる姫 ] のお迎え最終便は、深夜の12時。


収穫は手袋をはめて、一本一本選別しながら丁寧に引き抜く。少しでも傷や汚れのついたものは出荷しない。
「ひとつのボトルで6本出荷できればよいほう。残りはうちの食卓に並びます。」
というほど、品質へのこだわりは徹底している。収穫のタイミングを逃さないために一日に3回も迎えに
行かねばならない。コプリーヌは増島家一手のかかるお姫様だ。

「もうやめたい、でもあの時もうちょっとがんばれば・・・とあとで後悔したくないので。」
とはキノコ栽培にかける健太郎さんの百姓の意地だ。諦められない魅力がコプリーヌにはある。

乳飲み子のような白いやわ肌からかすかに香る甘い匂いが、火を通すといきなりキノコとしての存在を主張し始める。
「コプリーヌは香りも強く美味しいダシがとれます。特にクリーム系の料理とよく合いますよ。」

A lot of care, to grow Coprinus

Mr. Masujima picks coprinus very gently.
He only sells purely beautiful, flawless mushrooms. It is easy to have flaw,
because it is so white and fragile.
They sell less than half amount of mushrooms comparing with total produce amount.
Also to pick them at just light time, they visit mushroom room 3 times a day,
morning, afternoon, and midnight, everyday.
It needs lots of time and caring, but so beautiful, has gentle aroma & taste.

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菌床の表面をかきだした後、そっと土をかぶせる。

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ホールがしんと静まり返る。孤独な空間で、ひたすらキノコと向き合う。

[ 美肌の秘密はコプリーヌ? ]

コプリーヌに多く含まれる成分、エルゴチオネインは、抗酸化作用が高く美肌・美白効果が期待されること
から、サプリメントや化粧品の成分として注目を集めている。
毎日食べているという増島家の夫婦は色白、10才はサバよめそうな美肌の持ち主であるだけに説得力がある。
それにしても、選別され出荷されない半量が気になる。
「今、どうにか加工して出荷できないかいろいろ検討しています。できれば、コプリーヌらしい白い色を
残したまま何か創れないかと・・・。」

コプリーヌをはじめキノコ類は食卓で主役になることはほとんど無いが、料理素材としての用途は広く、料理
の幅も広がる嬉しい食材だ。
コプリーヌのように、その成分に期待が寄せられるものも多く、キノコの魅力は計り知れない。

White mushroom for skin care

People says that coprinus is good for skin, since it has much amount of ergothioneine,
famous as one of components, exhibiting an excellent whitening effect.
Mrs. Masujima’s beautiful skin is perfect proof for that.
Over half amount of mushrooms can’t go to market now, although it has good taste
but looking is not perfectly beautiful.
They are trying to solve the problem and tell more people about this rare, beautiful mushroom, coprinus.

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12時過ぎにもこうして黙々と、増島さんはコプリーヌと向き合う。365日、休みなく。

[ 創り手の想いも一緒に届けられる、仕組みを作りたい ]


健太郎さんがキノコ作りを通して常に意識しているのが、食べてくれる人たちのこと。
暖かい食宅の笑顔や会話、大切な人とのひとときなど、さりげない日常のひとコマを彩る食べ物だからこそ、
おいしさや品質にはとことんこだわる。

ましてや、食べた人の血となり肉となるものだけに、安全上での妥協は許されない。
そんな思いをちゃんとと受け止めてくれる人たちに食べてもらいたい。それには、生産者も自ら情報発信を
してゆくべきと、仲間とともにイベントを企画し、創り手の想いを届ける仕組みをつくる。

キノコ栽培を始めた父である先代から受け継いだ百姓の誇りを胸に、活動に暇が無い毎日だ。

From farm to table

People says that coprinus is good for skin, since it has much amount of ergothioneine,
famous as one of components, exhibiting an excellent whitening effect.
Mrs. Masujima’s beautiful skin is perfect proof for that.
Over half amount of mushrooms can’t go to market now, although it has good taste
but looking is not perfectly beautiful.
They are trying to solve the problem and tell more people about this rare, beautiful mushroom, coprinus.
Mr. Masujima always think about people who eat it on the table.
He takes importance of quality, safety and taste, because it becomes part of their body and soul.
We, as farmers, should held event and try to tell customers about their products by themselves,
not only just selling it, he thinks.
He is trying to set up events with other farmes in Shizuoka.

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丁寧に手間ひまかけて育てられたコプリーヌ。出荷されるのは半量にも満たない。

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商品を梱包する作業場には、先代の写真がそっと見守るように飾られている。

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収穫したコプリーヌは、新鮮なうちに手作業でパックされ、すぐに出荷される。